CASE

症例紹介

  • 再根管治療
  • 意図的再植術

左下の歯茎がぷっくり腫れている。歯が割れているかもしれない。意図的再植術と再根管治療を行なった症例。

通院時の年齢 29歳
性別 女性
通院回数 6回(初診+意図的再植術+抜糸+経過観察+再根管治療+根管充填)
通院目的 左下の歯茎がぷくっと腫れている。治療して欲しい。
処置内容 意図的再植術+再根管治療(追加)+支台築造
費用 187,000円+88,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。)
備考 根尖病変が大きく、頬側に排膿路、歯牙動揺あり。歯根破折疑い。

治療方針を決める際には、基本的には根管治療を先に行って歯の中の状況を改善してそれでも治癒しない場合に外科処置を行います。
しかし、病変の形態から破折の疑いがあるような場合は、先に外科処置を行なってから再根管治療を行うようなケースもあります。
治療の適切なタイミングを見極めて、患者さんにとって費用対効果がよく、ご納得いただけるような方法をご相談の上、治療方針を決定していきます。
今回は、下顎第二大臼歯の意図的再植術を先に行い、破折がないのを確認した後、再根管治療を行なった症例をご紹介したいと思います。

初診時

患者さんは「左下の歯茎がぷっくり腫れている。治療して欲しい。」を主訴に来院されました。
この歯は10年ほど前に根管治療を行い、数年前に痛みと歯茎の腫れが出てきて受診した際は抗生物質を飲んで症状が落ち着いていました。
しかし、半年ほど前から痛みはないものの歯茎がぷっくり腫れるようになり、腫れる→治るを繰り返していました。
数ヶ月前に別のクリニックを受診した際に再根管治療が必要と言われました。
その際は抗生物質の処方と膿を掻き出す処置をしてもらい、一時的に症状は落ち着きましたが、すぐに腫れが再発したため、いよいよ治療を受けないといけないと思い、当院に来院されました。

口腔内診査では、診査時には歯周ポケットはありませんでしたが、2度の動揺があり、頬側には以前切開した跡とサイナストラクトがありました。
デンタルX線では病変のサイズは分かりませんでしたが、CT撮影をしてみると、根尖部に下歯槽管付近までおよぶ病変ができており、頬側の骨が大きく失われていました。
病変のでき方から破折の可能性も示唆されたため、以下の治療方針をご提案しました。
①経過観察
②抜歯
③再根管治療→意図的再植術
④意図的再植術→再根管治療
各種治療方針のメリットデメリットをご説明したところ、④意図的再植術→再根管治療をご希望されたため、次回より治療を進めることになりました。

 

治療1回目(左下7意図的再植術)

まず十分に麻酔を行い、効いているのを確認してから、ジルコニアのクラウンを除去しました。
次に歯を脱臼させ、鉗子にて抜歯を行い、骨窩洞内にある肉芽組織を鋭匙とピンセットで取りきりました。
根尖部を切断し、根と切断面をメチレンブルーにて染め出し、破折がないかどうかを確認した後、感染している部分バーで除去し、問題ないと判断した時点でMTAセメントを充填しました。
縫合糸にて固定したのち、念の為ボンドで一つ前の歯と固定して、治療を終了いたしました。

 

 

治療2回目(抜糸)

2回目来院時には痛み等の症状はほぼなくなっており、動揺もかなりましになっておりました。
固定をしていた糸を抜き、術後1ヶ月の経過観察を行うことをお伝えしました。

 

経過観察(術後1ヶ月)

1ヶ月来院時には動揺もほぼなく、症状はありませんでした。
意図的再植術時に根管内が汚れていてことも踏まえ、再度再根管治療の必要性についてお伝えし、治療を進めていくことになりました。

 

治療3回目(左下7再根管治療)

麻酔を行い、土台を除去するとカリエスがあったため除去し、CRにて隔壁、ラバーダム防湿下にて、根管形成を行い、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて根管内を洗浄しました。
一番奥の歯で操作が難しいことと、長時間お口を開けたままでいることが難しかったため、充填と土台は次回にすることをお伝えし、仮の蓋をしてこの日は終了いたしました。

 

治療4回目(左下7根管充填+支台築造)

麻酔を行い、仮封材を除去し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを用いて根管内を洗浄し、ガッタパーチャポイントとバイオセラミックシーラーを用いて根管充填を行い、ファイバーポストとレジンにて支台築造を行い、治療を終了しました。

 

経過観察(意図的再植術後1年)

術後3ヶ月・6ヶ月の時点で、歯の揺れはなく、打診などの臨床症状もなく順調に経過しておりました。
術後1年の経過観察時に撮影したCT像では病変は治癒を示しておりました。

 

患者さんからは「今はまったく腫れたり揺れたりしません。溶けた骨も元に戻るんですね。治療してよかったです。」とのお言葉をいただきました。
グラグラだった歯がしっかりとしているのを見るととても嬉しく思います。
治療を頑張ってくださった患者さんに改めて感謝です。
引き続き、抜歯したくない・なんとか歯を残したいと願う患者さんのために日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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