- 再根管治療
- 意図的再植術
歯がぐらぐらして、歯茎から膿が出てくる。歯が割れているかも知れないが、抜歯はしたくない。意図的再植術と再根管治療で治癒した症例。
通院時の年齢 | 27歳 |
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性別 | 女性 |
通院回数 | 6回(初診+意図的再植術+固定チェック1+固定チェック2+経過観察+再根管治療) |
通院目的 | 歯がぐらぐらして、歯茎から膿が出てくる。歯が割れているかも知れないが、抜歯はしたくない。 |
処置内容 | 意図的再植術+再根管治療(追加)+コア築造 |
費用 | 165,000円+77,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。) |
備考 | 被せ物を外さずに意図的再植術。メタルコアの色が気になる。 |
治療方針を決める際には、基本的には根管治療を先に行って歯の中の状況を改善してそれでも治癒しない場合に外科処置を行います。
しかし、破折が疑われるため根管治療より先に破折を確認して欲しいケースなどは、先に外科処置を行なう際に破折の有無を確認し、症状が改善するのを確認してから根管治療を行うケースもあります。
治療の適切なタイミングを見極めて、患者さんにとって費用対効果がよく、ご納得いただけるような方法をご相談の上、治療方針を決定していきます。
今回は、上顎左側第2小臼歯の意図的再植術を先に行い、症状が改善したのちに再根管治療を行なった症例をご紹介したいと思います。
初診時
患者さんは「歯がぐらぐらしていて、歯茎から膿が出ている。」を主訴に、かかりつけ歯科医院よりご紹介されて来院されました。
口腔内診査では、ポケットはありませんでしたが、打診痛・2度の動揺があり、頬側のサイナストラクト(フィステル)から膿が出ていました。
デンタルX線とCT撮影をしてみると、に左上5根尖〜左上6近心にかけて病変が確認でき、頬側の骨が吸収され口腔内との交通路ができていました。
かかりつけ歯科医院より破折の可能性について聞いていたことや、根尖部の穿孔の可能性踏まえ、
①経過観察
②抜歯
③再根管治療→意図的再植術
④意図的再植術→再根管治療
などの治療方針について、メリットデメリットをご説明したところ、④意図的再植術→再根管治療をご希望されました。
費用的なこともありましたので、一旦は当院で意図的再植術をした後、再根管治療とコア除去は症状が落ち着いてから再度相談したいとのことでした。また元々の歯の長さが短く、外科治療の際にはあまり多く切断できず感染源を取り残すリスクがあるため、場合によっては再外科が必要になる可能性についてもお伝えいたしました。
審美性や清掃性にも配慮が必要でしたので、一旦は被せ物を外さずに咬み合わせを調整して意図的再植術を行うことになりました。
患者さんは「抜歯になる可能性が高いと言われていますが、なんとか残していただきたいです。」とおっしゃられ、次回より治療を進めることになりました。
治療1回目(意図的再植術)
浸潤麻酔をしてから、噛み合わせを調整し、被せ物が割れないように抜歯しました。
骨窩洞内の感染を除去し、汚染部位を確認したのち、根尖部を最小限だけ切断し、逆根管形成および逆根管充填(MTAセメント)を行ったのちに再植し臨在歯とスーパーボンドにて固定いたしました。
幸い破折はありませんでした。
固定チェック1(術後1週間)
術後数日は、少し腫れましが、痛みもほとんどなく経過していました。
腫脹やサイナストラクト(フィステル)も消失しており、問題ないと判断し、術後1ヶ月で固定のチェックでご予約をお取りいたしました。
固定チェック2(術後1ヶ月)
特に痛みや腫れなどの症状はありませんでしたが、スーパーボンド固定を除去するとまだ揺れはありました。
ある程度揺れが治るまで再固定しなおして、このまま経過観察へ移行いたしました。
経過観察(術後3ヶ月)
3ヶ月の経過観察でも動揺はまだあったため、再度固定し直して経過を見ることになりました。
経過観察(術後6ヶ月)
6ヶ月の経過観察では動揺も治まっておりました。
金属の土台が入っているため、被せ物に黒色が透ける見えることも気になっておられましたので、当院で再根管治療と支台築造を行うことになりました。
治療2回目(再根管治療)
麻酔を行い、クラウン除去、メタルコア除去、CRにて隔壁、ラバーダム防湿を行い、根管内を形成・洗浄していきました。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを用いて根管内を最終洗浄し、ファイバーポストとレジンにて支台築造を行いました。
患者さんには最終補綴をしていただくようにお伝えし、かかりつけ歯科医院様にもご連絡いたしました。
経過観察(術後1年)
術後1年では、臨床症状は特になく、病変の縮小傾向が見られました。
術前にあった動揺もなくなり、しっかりと咬めるようになっていました。
患者さんからは「抜歯になるかもしれないところから、普通に咬めるようになって嬉しいです。大事にします。」とのお言葉をいただきました。
術前の動揺の状態や歯の長さ、排膿などの症状を考えると抜歯になる可能性もあった中、なんとか咬めるところまで治ってきてくれて、一安心です。
患者さんのポテンシャルに感謝です。
これからも、抜歯したくない・なんとか歯を残したいと願う患者さんのために日々精進してまいります。
※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。