CASE

症例紹介

  • 再根管治療
  • 意図的再植術
  • 歯性上顎洞炎
  • 歯根端切除術

再根管治療を受けていたがニキビが治らない。意図的再植術(歯根端切除術を伴う)と再根管治療を行なった症例。

通院時の年齢 39歳
性別 女性
通院回数 5回(初診+歯根端切除術・意図的再植術+抜糸・固定チェック1+固定チェック2+再根管治療)
通院目的 再治療を受けていたがニキビが出来た。自分の状態を知りたい。
処置内容 意図的再植術(+歯根端切除術)+再根管治療+支台築造
費用 187,000円+88,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。)
備考 歯根端切除術後に意図的再植術を行なった。歯性上顎洞炎を併発。

治療方針を決める際には、基本的には根管治療を先に行って歯の中の状況を改善してそれでも治癒しない場合に外科処置を行います。
しかし、歯の解剖学的問題や材料の溢出などにより、再根管治療での治癒が難しいケースでは、先に外科処置を行なって症状が改善するのを確認してから根管治療を行うケースもあります。
また、外科処置である意図的再植術を行う際に、「根の先が肥大している」「根の湾曲が強い」などにより抜歯が難しい場合は、先に歯根端切除術を行なってから意図的再植術を行うこともあります。
治療の適切なタイミングを見極めて、患者さんにとって費用対効果がよく、ご納得いただけるような方法をご相談の上、治療方針を決定していきます。
今回は、右側上顎第1大臼歯の意図的再植術(歯根端切除術を伴う)を先に行い、症状が改善したのちに再根管治療を行なった症例をご紹介したいと思います。

 

初診時

患者さんは「他院で右上の奥歯を根管治療しているが、ニキビのようなものが出てきた。一度診て欲しい。」と来院されました。
口腔内診査では、右上6は仮歯がされており、歯周ポケットや動揺はなく、軽度の打診痛がありました。
来院時にはサイナストラクト(フィステル)は確認できませんでしたが、疲れると度々腫れて膿が出てくるとのことでした。
デンタルX線とCT撮影をしてみると、MB・DB・P根に根尖病変が確認でき、P根根尖より歯科材料の溢出が疑われ、歯性上顎洞炎の併発も確認できました。
すでに複数回再根管治療が行われているにもかかわらずサイナストラクトが出現し排膿があり、材料の溢出が見られる歯に対して再根管治療を行なっても、高い成功率が望めない可能性があることも踏まえ、
①経過観察
②抜歯
③再根管治療→意図的再植術(歯根端切除術を伴う)
④意図的再植術(歯根端切除術を伴う)→再根管治療
などの治療方針について、メリットデメリットをご説明したところ、④の歯根端切除術+意図的再植術→再根管治療をご希望されました。

患者さんは「なんとか自分の歯で噛めるようになりたいです。よろしくお願いします。」とおっしゃられ、次回より治療を進めることになりました。

 

治療1回目(歯根端切除術+意図的再植術)

浸潤麻酔をしてから、歯肉を切開剥離し、根尖部の病変および漏れ出ていた歯科材料を除去しました。
肉芽組織を掻爬した段階で、上顎洞と口腔内が交通したため、生理食塩水使用時に鼻から喉までいかない様に注意しながら、炎症により膨らんでいた近心および遠心の頬側根尖を切断しました。
その後時間をかけて割らないように抜歯し、破折線や汚染部位を確認したのち、口蓋根尖を切断、各根管を逆根管形成および逆根管充填(MTAセメント)を行いったのちに再植し縫合しました。

 

抜糸・固定チェック1

術直後数日は、鼻から喉の方へ鼻水のようなものが降りてくる感じがあったそうですが、2回目来院時には症状はなくなっており、痛みもほとんどありませんでした。
抜糸後にまだ少し揺れがあったため、念の為もう一度動揺のチェックでご来院いただくことにいたしました。

固定チェック2

動揺もなくなっており、痛みはありませんでした。
再根管治療を行なっても問題がないと判断し、次回より治療を進めていく旨を説明しました。

 

治療2回目(再根管治療)

麻酔を行い、ラバーダム防湿を行い、仮封材を除去、根管内を形成・洗浄していきました。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを用いて根管内を最終洗浄し、ファイバーポストとレジンにて支台築造を行いました。術後のX線撮影を行い、今後病変がどうなっていくかを患者さんと一緒に見ていく旨をお伝えし、治療を終了しました。

 

 

 

 

経過観察(術後1年)

術後1年では、臨床症状は特になく、病変の縮小傾向が見られました。
まだ完治とは言えませんので、術後2年の経過観察のご予約をお取りいたしました。

 

患者さんからは「なんとか歯が残ってくれてとても嬉しいです!今は痛くもなんともありません。治療してよかったです、ありがとうございます!」とのお言葉をいただきました。
歯性上顎洞炎が併発しており、治療時間も長くかかってしまいましたが、患者さんの協力もあり無事に終えることができました。
引き続き、患者さんと二人三脚で経過を追ってまいります。
術後2年の経過が出れば、また掲載させていただきます。
これからも、抜歯したくない・なんとか歯を残したいと願う患者さんのために日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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