CASE

症例紹介

  • 再根管治療
  • 自家歯牙移植

歯が割れている。抜いてインプラントと言われているが、他に方法はないのか・・・。自家歯牙移植をおこなった症例。

通院時の年齢 42歳
性別 女性
通院回数 5回(初診+自家歯牙移植+固定チェック1+固定チェック2+再根管治療)
通院目的 歯が割れている。インプラント以外の方法はないか相談したい。
処置内容 自家歯牙移植+再根管治療(小臼歯)+支台築造
費用 77,000円+154,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。)
備考 破折の可能性。骨欠損が多い。

どんなに綺麗に掃除やメンテナンスをしていたとしても、不運にも大切な歯が割れてしまうことがしばしば起こります。
小さな亀裂程度であれば、部分的に補修してあげることで、歯を保存できることがありますが、真っ二つに割れているような場合は、残念ながら抜歯になってしまいます。
もちろんどうしても残したいという希望がある場合は、なんとか残すように手を尽くすこともありますが、その歯がどのくらい持つかどうかは不明なであるため、抜歯をおすすめせざるをえないことも少なくありません。

しかしまれに、もう抜く前提のご自身の歯を利用することで、割れている歯の代わりをしてもらえることがあります。
移植した歯根膜が骨や組織を再生させてくれることで、新たな歯として噛み合わせを回復させることができます。
今回は、割れてしまった上顎第二小臼歯(左上5)の代わりとして、下顎第一大臼歯(左下6)の遠心根を用いた症例をご紹介いたします。

初診時

患者さんは、左上5と左下6の抜歯を他の歯科医院にて伝えられましたが、なんとか残す方法がないかということで当院に来院されました。

噛むと痛いとの自覚症状があり、歯に動揺・打診痛がありました。
CT上では左下5及び左下6の近心根に根尖病変が確認でき、病気の形から破折が強く疑われました。

歯や骨の状態から考えると、左上5左下6ともに抜歯して、補綴処置(インプラントや入れ歯)はどうかと提案をしましたが、ご自身の歯の保存を強く望まれていたため、左下6の遠心根を左上5に移植する治療法を提案いたしました。
治療を希望されたため、次回より治療を進めていくことになりました。

 

治療1(自家歯牙移植)

まずは左上5と左下6に麻酔を効かせた上で、左下6の被せ物と土台を除去しました。
左下6の虫歯をとり、髄床底で近心根と遠心根に分割し、近心根のみ抜歯を行いました。
近心根には垂直性の亀裂が確認され、破折が判明しました。

次に左上5を鉗子とヘーベルにて抜歯し、骨内を掻爬しました。
歯はCTで確認した通り、真ん中で真っ二つに割れていました。

左下6の遠心根を抜歯し、根の周りに破折などのトラブルがないかどうかを確認した後、左上5のポジションに移植し、縫合しました。
デンタルX線写真で歯の状態を確認し、問題ないと判断して、その日の治療は終了しました。

 

 

固定チェック1(術後1週間)

1週間後に固定状況の確認のためにご来院いただいた際には、まだ歯は揺れており、術後3週間で経過観察を行うことにしました。

 

固定チェック2(術後3週間)

3週間の経過観察時には、歯の揺れもほぼなく問題ないと判断し、引き続き再根管治療を行なっていくことになりました。

 

治療2(再根管治療)

麻酔後に隔壁を行い、ラバーダム防湿を行いました。
古い材料を除去し、根管形成をしていきました。
根尖部は石灰化していたため、無理に根管内をすすめることはせず、掃除ができるところまで行い、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAにて洗浄し、根管充填及び支台築造を行いました。
術後にデンタルX線撮影を行い、引き続き経過観察をしていくことをご説明し、治療を終了いたしました。

経過観察(移植後1年)

術後6ヶ月の時点で、病変は縮小傾向を示していましたが、違和感が少しあったため、術後1年までは仮歯にて経過観察を行うことになりました。
術後1年での経過観察では臨床症状もなく、CT画像上で病変の治癒が確認できました。

 

 

 

現時点で口蓋側の骨レベルは下がってしまったもの、頬側は十分な骨の回復がみられ、違和感や動揺はなく経過しております。

患者さんからは「まさか下の歯を上の歯に移動できるとは思いませんでした。しっかり磨いて大事にします!」とのお言葉をいただきました。
予後が読めない難しい処置ではありましたが、無事に回復し噛めているので一安心です。
引き続き、抜歯したくない・なんとか歯を残したいと願う患者さんのために日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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