症例紹介

初診

患者さんは何年か前から、体調を崩すと左側の顔面が痛くなる症状があったが、どこが原因かわからないような状況だったそうです。
先日、左顔面あたりに激痛があり、耳鼻科に行ってCT撮影を行ったところ、歯が原因で鼻に炎症が生じていると説明を受けました。
急性症状があったため、抗生物質と痛み止めを処方され、大分マシにはなったが、まだ痛みがあることを耳鼻科の先生にご相談したところ、歯科での治療が必要な旨を伝えられました。
かかりつけ歯科医院ではCTがなかったこともあり、耳鼻科の先生から当院を紹介され来院されました。

口腔内診査では、患歯である左上６にはメタルボンドクラウンが装着されており、歯の周りに虫歯もなくも歯周ポケットもありませんでしたが、打診痛がありました。
デンタルX線画像では、歯には大きなメタルコアが装着されており、CTでは、近遠心根に根尖病変が確認でき、上顎洞への排膿路が形成され、歯性上顎洞炎を生じていることが確認できました。

治療方針として
①経過観察
②抜歯
③治療（再根管治療・歯根端切除術）
などのついてのメリットデメリットについてお伝えし、耳鼻科と連携が必要であることもお伝えしました。

患者さんは歯根端切除術をご希望されたため、次回より治療を進めていくことをお伝えし、診察を終了いたしました。

治療(左上６歯根端切除術)

浸潤麻酔をしてから、歯肉を切開剥離し、歯や骨から感染している組織を除去し、根尖部を切断し染め出した後、感染の取り残しや破折がないかを確認しました。
問題ないと判断し、逆根管形成および逆根管充填（バイオセラミックシーラー＋パテ）し、縫合しました。

デンタルX線撮影を行い、今後病変の経過を患者さんと一緒に追っていくことをご説明し、治療を終えました。

抜糸（1週間）

術後1週間で来院いただいたき、抜糸および術野の洗浄を行いました。

経過観察（術後１年）

術後1年の経過観察時のCT撮影では、根尖病変の治癒がみられ、根尖部に骨の添加が確認できました。

「治療する前は体調が悪くなった時にズキズキした痛みに悩まされましたが、今は全く問題ありません。ありがとうございます！」とのお言葉をいただきました。
今は痛みなく快適過ごしているとのことでとても嬉しいです。

被せ物を外さずに治療ができる場合もありますし、どうしても治療の成功率を上げるために被せ物を外さなければならない場合もあります。
今回は歯根端切除術により、被せ物を外さずに歯を無事に保存できたことを嬉しく思います。
引き続き大切な歯を少しでも残せるように日々精進してまいります。

※これらすべての口腔内写真やX線写真・CT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。