- 根管治療
- 自家歯牙移植
左下の奥歯が割れているから抜歯と言われた。自家歯牙移植術にて対応した症例。
| 通院時の年齢 | 46歳 |
|---|---|
| 性別 | 女性 |
| 通院回数 | 6回(初診+外科的破折診断+自家歯牙移植術+固定チェック+根管治療1+根管治療2) |
| 通院目的 | 左下奥歯が割れていると言われた。膿が出ているのでなんとかして欲しい。 |
| 処置内容 | 自家歯牙移植+レプリカ作製+根管治療(大臼歯)+支台築造 |
| 費用 | 77,000円+9,900円+165,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。) |
| 備考 | 垂直性歯牙破折あり。左上8の移植を提案。 |
どんなに綺麗に掃除やメンテナンスをしていたとしても、不運にも大切な歯が割れてしまうことがしばしば起こります。
小さな亀裂程度であれば、部分的に補修してあげることで、歯を保存できることがありますが、真っ二つに割れているような場合は、残念ながら抜歯になってしまいます。
もちろんどうしても残したいという希望がある場合は、なんとか残すように手を尽くすこともありますが、その歯がどのくらい持つかどうかは不明であるため、抜歯をおすすめせざるをえないことも少なくありません。
しかしまれに、もう抜く前提のご自身の歯を利用することで、割れている歯の代わりをしてもらえることがあります。
移植した歯根膜が骨や組織を再生させてくれることで、新たな歯として噛み合わせを回復させることができます。
今回は、割れてしまった下顎第二大臼歯(左下7)の代わりとして、上顎第三大臼歯(左上8:親知らず)を用いた症例をご紹介いたします。
初診時
患者さんは、左下7の抜歯を他の歯科医院にて伝えられましたが、なんとか残す方法がないかということで当院に来院されました。
歯茎から排膿があり、根の先まで器具が入るような歯周ポケットや打診痛がありました。
CT上では左下7に頬側歯頚部〜根尖に至るまでの病変が確認でき、病気の形から破折が強く疑われました。
各種治療方針(①経過観察②抜歯③外科的破折診断④左上8を左下7へ移植する)についてご相談しましたところ、まずは割れているかどうかの確認をして、割れている場合は再度相談したいとのことでしたので、次回より治療を進めていくことになりました。

治療1(左下7外科的破折診断)
左下7に麻酔を効かせた上で、被せ物を除去し、一旦抜歯し破折診断を行いました。
根尖から歯頚部へと繋がった破折が確認できたため、保存不可能と判断し、今後の治療をどうするかをご相談したところ、自家歯牙移植術を希望されました。
まずは技工所に歯牙レプリカの作製を発注し、そのデータをもとにシミュレーションを行い、移植可能と判断した段階でご連絡しますとお伝えし、この日はは終了いたしました。
後日、CT上でシミュレーションを行い、治療ができることが確認できたので、自家歯牙移植術のご予約をお取りいたしました。
治療2(自家歯牙移植術)
まずは左上8と左下7部に麻酔を効かせた上で、左下7部に歯を植えるための準備を行いました。
事前に作成してあった歯牙レプリカを左下7部へ試適し、問題ないと判断した後、左上8を抜歯し噛み合わないように調整してから左下7の抜歯窩へ移植いたしました。
ポジションを確認してから、縫合糸で固定し治療を終了いたしました。
デンタルX線写真で歯の状態を確認し、問題ないと判断して、その日の治療は終了しました。
固定チェック1(術後1週間)
1週間後に固定状況の確認のためにご来院いただいた際には、ほぼ歯は揺れていなかったため抜糸を行い、患者さんと相談の結果術後3週間程度で根管治療を行うことにしました。
治療3(根管治療1)
3週間の経過観察時には、歯の揺れもほぼなく問題ないと判断し、根管治療を行なっていくことになりました。
麻酔しラバーダム防湿を行い、根管形成をしました。
根尖部の形態が複雑であったことも踏まえ、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、一旦水酸化カルシウムの貼薬を行いました。
治療4(根管治療2)
麻酔後にラバーダム防湿を行い、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAにて洗浄し、根管充填及び支台築造を行いました。
術後にデンタルX線撮影を行い、経過観察をしていくことをご説明し、治療を終了いたしました。


経過観察(移植後1年)
術後6ヶ月の時点で病変は縮小傾向を示し骨添加が見られましたので、被せ物をしていただきました。
術後1年での経過観察では臨床症状もなく、CT画像上で病変の治癒が確認できました。

移植歯の歯根膜がそこまでなかったため、歯根膜の位置までしか骨が回復されず支えとしては若干の不安はありますが、頬側は十分な骨の回復がみられ、術後すぐの時点から違和感や動揺はなく経過しておりました。
今後どのような経過を辿るのか、被せ物をしていただいた先生と連携をとりながら経過を見ていきたいと思います。
引き続き、抜歯したくない・なんとか歯を残したいと願う患者さんのために日々精進してまいります。
※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。







