「根の先の病気(根尖病変)が大きいので抜歯です。」は本当?
- 院長ブログ
他院にてデンタルX線やCT診査を受けた後に「根の先の病気(根尖病変)が大きいので抜歯です。」と言われた後に、セカンドオピニオンで来院される方が、一定数いらっしゃいます。
また、「この病気は嚢胞だから、治療しても治らない。なので、抜歯した方が良いと思います。」と説明を受けることもしばしばあるようです。
今日はこちらについて、少し書いていきたいと思います。
*病気が大きいと根管治療しても治らない?
根管治療行う際に病気が大きいと治らないとかいうと、一概にそうではありません。
病変の大きさと根管治療・再根管治療の成功率の相関性を調べた文献は多くありますが、「大きな病変のある歯は小さい病変のある歯よりも治療の成功率が低い」とする文献もあれば、「病変の大きさの違いと成功率に大きな差はない」という文献もあります。
つまり、現状は「どっちとも取れる」「はっきりとは言えない」という、なんともスッキリしない結論になっております。
統一した見解が得られない理由の一つに、文献によって「病変のサイズ設定」「成功の基準」などが異なるという点があります。
また、長期間の経過を追う中で「今は治ってる途中?」という歯を、成功とするかどうかによっても、データの見え方も変わってきます。
10mmを超える大きな病変というのは長期間感染が生じていることより、感染が複雑化している・バイオフィルムが形成している状況であるため、治療の成功率が低くなるという文献もあります。
しかし、実際に治療していく中で、大きな病変であっても根管治療・再根管治療で治るケースも多く見受けられます。
また、根管治療・再根管治療で治らなかったとしても、歯根端切除術や意図的再植術などの外科処置を行うことで、抜歯せずに保存できるようなケースもありますので、「根の先の病気(根尖病変)が大きいので抜歯です。」ということについては、「まだまだできることがあるかもしれないのに勿体無い!」というのが私個人の感想です。
外科治療についてはこちらをご参考いただければと思います。
「根管治療で治らなかったら抜歯です。」は本当?歯根端切除術・意図的再植術の有用性について
症例を一つご紹介したいと思います。
10代の患者さんで、幼少期の前歯外傷により、上顎の2−2歯の中の神経が知らぬ間に死んでしまっていました。
違和感を感じたため、歯科医院にて症状の出てきた右上2の根管治療を受けましたが、症状が改善しないこともあり、主治医よりご紹介されて当院へ来られました。
右上2は根管治療時に根管内より大量の排膿が見られることもあり、再根管治療のみで治癒するのが難しいと判断して歯根端切除術を行いました。オペ時に病気の部分を確認すると、大きな歯根嚢胞が形成されていました。
また、右上1・左上1・左上2は歯髄の検査で反応がなく神経が死んでいました。
よって外科処置ではなく、根管治療にて対応することになりました。
右上2:歯根端切除術と再根管治療
右上1・左上12:根管治療
術後3年の経過観察時では、病変は完全に治癒しておりました。
これを見ても「根の先の病気(根尖病変)が大きいので抜歯です。」と言えるのでしょうか?
いろいろな文献で様々なことが言われていますが、普段自分が臨床をしている中で「病気の大きい小さい」が「治癒するしない」の絶対的な判断基準にはならないのかなと感じています。
「抜歯と言われたが、なんとか歯を残したい」「治療をしているが症状が治らない」とお悩みの方、まだ歯を救う方法はあるかもしれません。
是非一度ご相談ください。
参考文献
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5.Siqueira JF Jr, et al. Outcome of Nonsurgical Root Canal Treatment of Teeth With Large Apical Periodontitis Lesions: A Retrospective Study. J Endod 2024;-:1–9.