CASE

症例紹介

  • 根管治療

何もしていなくてもズキズキ痛い。歯が割れているかも・・・。救急対応で根管治療した症例。

通院時の年齢 55歳
性別 男性
通院回数 4回(初診・冠部歯髄除去+救急来院+根管治療2回)
通院目的 左上の奥歯が噛むと痛い。破折しているかもしれない。
処置内容 根管治療+支台築造
費用 143,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。)
備考 破折の可能性。確定診断が困難。救急対応。

歯科医師が診断に困る状態の一つに「歯牙破折:歯が割れているかもしれない」があります。
「咬むと痛い」「ご飯を食べると染みる時がある」「急にズキズキする時がある」などが症状があるにも関わらず、口腔内診査やCTを含めた診査を行なっても、どの歯が原因で痛みが出ているか判断がつかない場合もしばしばです。
痛みがそれほど重症でない場合は、待機的診断が望ましいこともあります。
しかし、ズキズキした痛みがある時などは、その場でさまざまなリスクを許容していただいた上で治療介入せざるを得ないこともあります。
今回は治療を開始していく中で、亀裂からの感染を確認した症例をご紹介したいと思います。

 

初診+左上6冠部歯髄除去

患者さんは、「左上奥歯がズキズキして噛むと痛い」を主訴に来院されました。経過と問診内容は下記の通りです。

・かかりつけ歯科医院があり受診したが、X線画像や診査ではどの歯が原因か特定できないので、神経をとるのは勿体無いと言われた。
・「歯が割れているかも知れない」と言われ、経過観察をしていたが、我慢できないくらい痛くなってきた。
・今は頭痛がする時もある。
・歯は抜きたくないが痛いのはとって欲しい。

まず、口腔内診査を行うと歯周ポケットはありませんでしたが、左上67に強い打診がありました。
咬み合わせが強く歯軋り食いしばりがあり、歯の表面にはその影響で小さな亀裂が見られました。
頬側と口蓋側から、冷温診および電気診を行いましたが、当院でも左上67において「この歯が原因です!」と言えるような診断には至りませんでした。デンタルX線およびCT画像を用いても病変は確認できませんでした。

診査診断と患者さんの今までの経過および自覚症状から、

・左上6が原因である可能性が高いが、もしかしたら左上7の治療も必要になる可能性がある。
・歯の表面に亀裂が複数あり、そこから感染が起こっている可能性がある。
・亀裂が大きい場合は、抜歯になるかもしれない。

などについてご説明し、治療のメリットデメリットについてお話いたしました。
患者さんはまずは左上6を治療し、必要であれば左上7の治療もご希望されました。
当日も自発痛があり、即日の治療をご希望されたため、応急処置を行うことにいたしました。

十分に麻酔を行った後にインレーを除去、咬み合わせを調整し、亀裂からの感染が疑われる部分をラバーダム下で除去していきました。
口蓋側の亀裂が歯髄に到達しており、口蓋根歯髄が部分的に壊死している状態で、おそらくこの亀裂が原因で感染生じて壊死してしまい、それが原因で痛みが出ていたのかと考えられました。

幸い亀裂は冠部〜歯頚部で止まってくれていたので、感染部分と冠部歯髄を全て取り切り、水酸化カルシウムを貼薬し、仮封を行いました。
治療している側で咬まないようにしていただくなどの術後の注意事項をお伝えし、痛み止めをお出しして終了いたしました。

 

救急来院(左上7咬合調整)

次の日に患者さんから「治療している歯の後ろの歯が咬んだら痛いので、何とかして欲しい」とのご連絡があり、診療時間外に急遽来院していただくことになりました。
口腔内診査を行うと、左上7の歯が強く当たって痛みが出ていました。
元々咬み合わせが強い上に、手前の歯が治療のために咬まなくなったのが原因で、奥の歯の負担が増えたために痛みが出ていることが考えられました。
痛みの改善および左上7の負担を減らすために咬合調整を行いました。

 

治療2回目(左上6根管治療)

来院時には、自発痛咬合痛はありませんでしたが、左上6に非常に強い打診痛が出ていました。
根管充填を予定していたのですが、術後に痛みが重症化するトラブルなどの可能性も考慮して、今回は根管貼薬までで様子をみて、根管充填は次回行うとご説明しました。
浸潤麻酔を十分に奏効させてから、ラバーダム防湿下での根管形成および洗浄を行い、水酸化カルシウムにて貼薬、仮封を行い終了いたしました。

 

治療3回目(左上6根管充填+支台築造)

前回の治療の数日後には痛みも落ち着き、打診痛なども大分落ち着いていました。
麻酔を行い、ラバーダム防湿下で、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを超音波振動器具により攪拌して最終洗浄を行いました。
根管バキュームとペーパーポイントで根管内を乾燥させ、ガッタパーチャポイントとバイオセラミックシーラーを用いて根管充填を行いました。


その後、レジンコアによる支台築造を行い、形態を修正し治療を終了しました。

かかりつけ歯科医院様には、一度仮歯を装着していただき、打診や咬合に問題ないと判断した段階で最終補綴へ移行していただくようにお願いいたしました。
患者さんには、今後歯の状態がどうなるかを一緒に確認していくことをお伝えし、治療を終了しました。

 

 

経過観察(6ヶ月)

術後は特に大きな問題もなく、術後3ヶ月の時点でかかりつけ歯科医院の先生により被せ物が装着されていました。その後問題なく過ごされており、術後6ヶ月の経過観察時には、左上6の打診痛は無くなっていました。
左上7には日常生活では何も感じないが、若干の打診痛があり、今後症状が出てくる可能性があることをご説明しました。

今後どのように変化していくかを観察しつつ、必要なタイミングで適切な治療をご提案できればと思います。
患者さんからは「はじめは痛くてとても大変でしたが、治療していただいたおかげでもうすっかり大丈夫です。痛い時にすぐに対応してくださりありがとうございます!」というお言葉をいただきました。
今回のように、咬み合わせや亀裂が原因で痛みがある患者さんの中には、検査をしても診断がつかず辛い思いをされている方もいらっしゃるかと思います。
患者さん一人一人お口の中の状況は違いますので、同じような症状であったとしても治療方針や説明内容は異なることがあります。
少しでも患者さんのお悩みを解決できるように、これからも精進していきたいと思います。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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