CASE

症例紹介

  • 再根管治療
  • 意図的再植術

下の奥歯が痛くてたまらない。痛みは取って欲しいが出来るだけ自分の歯を残したい。

通院時の年齢 36歳
性別 男性
通院回数 3回(初診+意図的再植術+再根管治療)
通院目的 左下の奥歯が痛くてたまらない。抜かずに残して欲しい。
処置内容 意図的再植術+コア築造
費用 165000円+22000円(※治療当時の費用になります。)
備考 急性症状あり。痛み止めを飲んでも効かない時がある。

「昔に根管治療をした歯がズキズキする」という状態は様々な原因が考えられます。その中の一つに、根の先の病気が悪化し骨の中で膿の逃げ道がなくなることで、急激に痛みが出てしまうことがあります。今回は、下歯槽管付近にまでに及ぶ大きな炎症があり、それに伴う多量の排膿のために再根管治療が途中で続行不可能になり、意図的再植術に切り替えたことでなんとか歯を保存できた症例をご紹介します。

 

初診時・治療1回目

患者さんは、以前に根管治療を受けた左下の奥歯がズキズキして、日常生活を送るのも困難な状態であるため、何とかして欲しいと来院されました。

口腔内診査を行うと左下7にプラスチックの土台が充填されていてその周辺に虫歯があり、指で歯を少し押しただけで強い痛みがありました。デンタルX線を撮影しましたが、病変のサイズや炎症の状況を判断できなかったため、CT撮影を行いました。

 

意図的再植 術前CT患者さんからは「なんとかこの痛みを取って欲しい。できるなら歯は残したい。」とのご希望がありました。

以上を踏まえた上で、
①まず再根管治療を試みる
②排膿が止まらない場合は、意図的再植術に治療方針を変更する可能性がある
③破折等があり保存不可能と判断した場合は、抜歯になる可能性もある
等の説明を行いました。

患者さんは「この痛みが少しでも良くなるなら治療して欲しい。」とおっしゃられ、当日の治療をご希望されたため、まずは再根管治療から進めることになりました。

炎症がとても強いため、通常の麻酔に加え下顎孔伝達麻酔を行い、十分に麻酔を効かせてから治療を開始しました。土台のプラスチックや虫歯を除去し、根管充填材を一部除去したところ、根管から大量に膿が出てきました。20分ほど膿を吸引していましたが、いっこうに収まる気配がないため、患者さんにご相談し意図的再植術に切り替えました。歯を鉗子で掴み何回か揺らすとスポンと抜けてきました。骨の中にあった膿の塊を神経の管を傷つけないように丁寧に取り除き、排膿がなくなったのを確認してから中に唾液が入らなないようにガーゼを噛んでもらいました。

抜いた歯を生理食塩水に浸したガーゼで歯根膜を傷つけないように掴み、根の先の感染部分をメチレンブルーで染め出しながら除去していきました。感染部を取りきった後、MTAセメントにて根管の封鎖を行い、処置の終わった歯に仮の蓋をしてから口腔内に戻しました。抗生物質と痛み止めをおだしし、左側ではあまりお食事をしないようにお伝えして治療を終了しました。

 

治療2回目

2回目来院時には痛みはすっかりなくなっており、全く気にならなくなっていました。感染しないように配慮しながら、根管充填およびファイバーポストを伴うコア築造を行いました。術後の経過を患者さんと一緒に見ていくことをお伝えし、治療を終了しました。

 

経過観察(術後3ヶ月・6ヶ月・1年)

術後3ヶ月では臨床症状もなく経過も良好で、術後6ヶ月の時点では最終補綴が装着され、術後1年の経過観察を迎えました。2次元のデンタルX線画像では、術前術後を比べても治癒しているかどうかがわかりにくく、「病気がどうなっているかハッキリ知りたい」とのご要望もあったためCT撮影を行いました。

CTでは、もともとあった大きな根尖病変が治癒しているのが確認できました。「実際に病気が画像でなくなっているのを見て、とても安心しました。ありがとうございます、大事に磨きます!」と感謝の言葉をいただけました。

術前の痛みがとても強く、もう抜歯になるかもしれないと考えていた歯でも、意図的再植術を行うことで痛みを取りつつ歯を残すことができました。患者さん一人一人お口の中の状況は異なりますので、同じような症状であっても必ず治るとは言えません。それでもご自身の歯で少しでも長く過ごしていただけるよう、日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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