CASE

症例紹介

  • 再根管治療
  • 意図的再植術

何回も根管治療をしているが、噛むと痛い。意図的再植術と再根管治療をおこなった症例。

通院時の年齢 58歳
性別 女性
通院回数 5回(初診+意図的再植術+固定チェック+再根管治療+根管充填)
通院目的 咬んだら痛い。再根管治療をずっと受けているが治らない。
処置内容 意図的再植術+再根管治療(追加)+コア築造
費用 187,000円+88,000円+22,000円
備考 病変が下歯槽管に近接している。

治療方針を決める際には、基本的には根管治療を先に行って歯の中の状況を改善してそれでも治癒しない場合に外科処置を行います。
しかし、すでに何度も根管治療を行なっている、あるいは歯の解剖学的問題により根管治療自体難しいケースでは、先に外科処置を行なって、症状が改善するのを確認してから根管治療を行うケースもあります。
治療の適切なタイミングを見極めて、患者さんにとって費用対効果がよく、ご納得いただけるような方法をご相談の上、治療方針を決定していきます。
今回は、下顎第二大臼歯の意図的再植術を先に行い、症状が改善したのちに再根管治療を行なった症例をご紹介したいと思います。

初診時

患者さんは「左下の奥歯が噛んだら痛い。」を主訴に来院されました。
かかりつけ歯科医院にて、何回も再根管治療を受けたが、痛みが引かずにいたところ、主治医から「専門的に根の治療をしている先生の話を一度聞いてみませんか?」とご相談を受け、当院へとご紹介されました。

口腔内診査では、歯周ポケットや動揺はありませんでしたが、強い打診がありました。
また、デンタルX線とCT撮影をしてみると、石灰化しているからか、根管が細くなっているため確認できませんでした。
また根尖病変が大きく、神経の近くまで及んでいました。
すでに複数回再根管治療が行われているにもかかわらず痛みが取れず、かつ解剖学的に再根管治療を行なっても高い成功率が望めない可能性があることも踏まえ、
①経過観察
②抜歯
③再根管治療→意図的再植術
④意図的再植術→再根管治療
などの治療方針について、メリットデメリットをご説明したところ、④意図的再植術→再根管治療をご希望されました。

患者さんは「先生の治療を受けたいと思います。よろしくお願いいたいします。」とおっしゃられ、次回より治療を進めることになりました。

 

治療1回目(左下7意図的再植術)

まず十分に麻酔を行い、効いているのを確認してから、鉗子にて抜歯を行いました。
事前にCT上で神経までの長さを測っておき、感染している組織を安全に除去していきました。
根尖部を切断し、切断面をメチレンブルーにて染め出し、感染している部分バーで除去し、染め出しを行いながら問題ないと判断した時点でMTAセメントを充填しました。
仮封材を追加し、ボンドで固定して1回目は終了いたしました。

 

 

治療2回目(固定チェック)

2回目来院時には症状はほぼなくなっており、歯の揺れ等もありませんでした。
再根管治療を行なっても問題がないと判断し、次回より治療を進めていく旨を説明しました。

 

治療3回目(左下7再根管治療)

麻酔を行い、仮封材を除去し、根管内を形成していきました。
以前の再根管治療で掃除しきれなかったところを清掃しようとしましたが、器材が奥までは進まなかったため、ファイルが入るところまでを丁寧に清掃し、薬液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)で攪拌洗浄を行い、水酸化カルシウム製剤を貼薬し、仮封して終了しました。

 

治療4回目(左下7根管充填)

麻酔を行い、仮封材を除去し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを用いて根管内を洗浄し、ガッタパーチャポイントとバイオセラミックシーラーを用いて根管充填を行い、ファイバーポストとレジンにて支台築造を行いました。術後のX線撮影を行い、今後病変がどうなっていくかを患者さんと一緒に見ていく旨をお伝えし、治療を終了しました。

 

経過観察(意図的再植術後1年)

術後3ヶ月の時点で、歯の揺れはなく、打診などの臨床症状もありませんでした。
6ヶ月経過観察時も臨床症状もなく、デンタルX線およびCT画像上でも問題なく経過しましたので、被せ物の装着へと移行していただきました。

 

さらに術後1年の経過観察時に撮影したCT像では病変は治癒傾向を示しておりました。

 

患者さんからは「あんなに噛んで痛かったのに今はなんともありません。治療してよかったです。」とのお言葉をいただきました。
神経が近く、痛みでお困りだったことを思うととても嬉しく思います。
治療を頑張ってくださった患者さんに改めて感謝です。
引き続き、抜歯したくない・なんとか歯を残したいと願う患者さんのために日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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