CASE

症例紹介

  • 再根管治療
  • 意図的再植術

歯が割れているかもしれない・・・。抜歯はしたくない。意図的再植術と再根管治療で対応した症例。

通院時の年齢 52歳
性別 女性
通院回数 10回(初診+治療回数5回+途中経過観察4回)
通院目的 歯が割れているかもしれない。抜歯したくない。
処置内容 再根管治療(小臼歯・大臼歯)+支台築造2本分+意図的再植術(小臼歯・大臼歯)
費用 71,500円(半額)+154,000円+44,000円+154,000円+82,500円(半額)(※治療当時の費用になります。)
備考 破折・パーフォレーション・エンドぺリオ病変の疑いあり。

根の先の病気でお悩みの患者さんの主訴を解決する方法として、歯根端切除術や意図的再植術といった外科的歯内療法はなくてはならないものです。
再根管治療は、すでに感染が起こっていたり歯や根管の元々の構造が人工的に変わってしまっていることも多いため、初めての根管治療と比べどうしても成功率が下がってしまいます。
根尖部の複雑な形態が原因で治癒しないのはもちろんのこと、穿孔(パーフォレーション)や部分的な歯牙破折、材料の骨内への溢出などがある場合は、外科的歯内療法無しで病気を治癒させるのは非常に難しいです。
今回は、穿孔や破折の可能性が高い、病変のある歯の治療において、意図的再植術と再根管治療で対応した症例をご紹介したいと思います。

初診時

患者さんは右下の奥歯にニキビのようなものができる時があり、腫れたり引いたりを繰り返していることが気になって来院されました。
疲れると痛みが出て膿が出てくるため、このまま置いておいても大丈夫がどうかを気にされていました。
デンタルX線とCT撮影をしてみると、右下5右下6共にJシェイプと呼ばれる歯が破折している時によく見られる透過像が見られ、右下5は近心頬側に限局した深い9mmの歯周ポケット、右下6は長期間に及ぶサイナストラクトと遠心に10mm歯周ポケットがあったため、再根管治療のみで対応できるか難しい状況でした。

治療にかかる費用や破折のリスク・その際の対応、抜歯になった際の選択肢等も踏まえ、さまざまな治療方針についてご説明したところ、最終的に以下の治療方針をご希望されました。

 

右下5
メタルコア除去後に意図的再植術を行い破折があるかどうかを確認し、大きな破折がある場合はそのまま抜歯、問題なければ再植して保存し、再根管治療および支台築造する。

 

右下6
メタルコアを除去後に再根管治療を行い3ヶ月経過観察、治癒を示していれば補綴するが、治癒傾向を示さない(サイナストラクトが存在する)場合は、外科的歯内療法へ移行する。

まずは、重要度の高い右下6の再根管治療から行い、その治癒を待つ間に右下5の意図的再植術を行うことになりました。

患者さんは「一本でも自分の歯を多く残すことができればそれが一番です。できる限り保存する方法でよろしくお願いします。」とおっしゃられ、次回より治療を進めることになりました。

 

 

治療1回目(右下567Br除去・右下6再根管治療)

まず麻酔を行い、古い右下567Brを除去、右下56のメタルコアを除去しました。
右下6の古いセメントやカリエスを全て除去し、髄床底や根管孔付近に破折線がないかどうかを慎重に確認しました。
幸い破折はなかったため、再度治療方針を患者さんと確認し、右下6の再根管治療を開始しました。
大きく歯質が失われているためレジンにて隔壁を行い十分に厚みを確保した後、ラバーダム防湿を行い、超音波チップとニッケルチタンファイルを用いて感染部分の除去をしていきました。
根管内を次亜塩素酸ナトリウムで洗浄し、水酸化カルシウムを貼薬し1回目の治療を終了しました。

 

 

 

治療2回目(右下6根管充填)

2回目来院時には特に症状はなかったものの、疲れた時は腫れる感じがするとのことでした。

再度拡大形成を行い、次亜塩素酸ナトリウムとEDTAで最終洗浄をした上で、ガッタパーチャポイントとバイオセラミックシーラーを用いて根管充填を行いました。
近心根にファイバーポストを入れてレンジンコア築造を行い、治療を終了しました。

 

 

治療3回目(右下5意図的再植術)

右下5周辺に十分に麻酔をした後、歯を脱臼させ歯根膜を傷つけないようにゆっくりと抜歯をしました。
抜歯した歯を精査しましたが、破折は見当たりませんでした。
根尖を切断し、感染部分を除去・逆根管形成しMTAセメントにて充填、再び歯を植え直してその日の治療は終了しました。

 

 

治療4回目(右下5再根管治療+支台築造)

2週間ほど期間をあけて右下5の揺れがある程度落ち着いてから、ラーバーダム防湿を行った上で再根管治療およびファイバーポストを伴う支台築造を行いました。

 

経過観察(右下6再根管治療後3ヶ月、右下5意図的再植術後2ヶ月)

右下5は病変の縮小傾向がみられましたが、右下6にはまだサイナストラクトがありました。術前でお伝えしていた通り、右下6は意図的再植術を行うことになりました。

 

 

 

治療5回目(右下6意図的再植術)

十分に麻酔を効かせた状態で、歯を割らないように歯根膜を傷つけないように十分な時間をかけてゆっくりと抜歯しました。
幸い破折はなかったため、根尖切除および感染源の除去後に、逆根管形成・充填を行い、再植しました。

 

 

 

経過観察(意図的再植術後3ヶ月〜1年)

右下6のサイナストラクトも消失し、疲れた時に腫れるような症状も全くなくなっていました。デンタルX線画像を撮影すると、病変の縮小傾向が確認できました。

 

 

さらに1年後の経過観察時に撮影したCT像では病変は大きく縮小傾向を示しておりました。

患者さんからは「抜歯になるかもしれない歯を残して下さってありがとうございます。ちゃんと磨いて大事にします。」とのお言葉をいただきました。
今回は幸いにも破折がなく保存することができましたが、歯が割れているかどうかは、実際に外科的な処置で目視にて歯の周りを確認してみないとわかりません。
重度の破折であればデンタルX線やCT画像に写ってくるのですが、そうでない場合は「割れているかも知れないが直接みてみないことにはわからない」と説明することしかできません。

それでも「治療をお願いします!」とチャレンジしてくださり、それが結果として歯の保存につながった時は、格別の喜びがあります。
引き続き、歯の保存に関してお困りも患者さんのために日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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