CASE

症例紹介

  • 再根管治療

歯茎が腫れて押すと痛い。ニキビから膿が出てくる。側枝が病変を作っている?再根管治療を行なった症例。

通院時の年齢 54歳
性別 女性
通院回数 3回(初診+再根管治療2回)
通院目的 ニキビができてそこから膿が出ている。
処置内容 再根管治療+支台築造
費用 143,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。)
備考 側枝の可能性あり。サイナストラクトあり。打診無し、歯周ポケット正常。

根管治療の成功率に関わる要因として、歯や根管の形態が挙げられます。シンプルに見える根管も実にバリエーション豊富です。
根の先3mmは特に複雑で、網目状の構造をとっている歯もあります。しかし、根管内を清掃するのはあくまで超音波チップやニッケルチタンファイルのような円形の器具であるため、どうしても清掃が行き届かない部分もあります。それを補うものとして、特殊な形状をした器具や、音波・超音波による薬液の攪拌がありますが、それも完璧ではありません。しかし、メインの根管を可能な限り清掃し歯の中の細菌量を減らし、免疫力>感染力の環境を作ってあげれば病気は治癒していきます。今回は病気に直接的に関係のある側枝を物理的に清掃できなくても、病変が治癒した症例を紹介したいと思います。

初診時

患者さんは左上の歯茎にニキビができて、そこから膿が出ていることを主訴に来院されました。特に痛いなどの症状は無いのですが、このまま放っておいても大丈夫かどうかを聞きたいとのことでした。記憶にないくらい随分前に、根の治療と被せ物の治療を受けたきり問題なく過ごしていたとのことです。

まず、口腔内診査を行ないましたが、歯周ポケットは正常、打診もなく、圧痛に関しても膿が出ては来るものの違和感が少しある程度でした。ニキビの部分に造影性のある材料を挿入し、デンタルX線撮影を行いました。

 

よく観察してみると、根尖とは別の方向に病変の中心があるようにみられます。根の形態が複雑である可能性や、病変の範囲を正確に確認するためにCT撮影を行いました。

CT像を確認すると、防腐剤が入っている方向と病変ができている部位にズレがありました。本来の根尖とは違う方向に機材で形成してしまっている可能性、または太い側枝があることでそこから病変ができている可能性がありました。

①抜歯②再根管治療③歯根端切除術④経過観察等の選択肢のメリットデメリットをご説明しました。患者さんは「まだ歯を抜きたくはないです。外科処置は怖いので、まずは再根管治療をして欲しい。」とおっしゃられ、再根管治療をすることになりました。

 

治療1回目

まず麻酔を行い、古い銀の被せ物を外し、金属の土台を除去していきました。出来るだけ正常な歯を削らないように腐敗したセメントや虫歯を除去していきました。その後、レジンにて隔壁を作製しラバーダム防湿を行いました。

超音波チップとニッケルチタンファイルで以前詰めてあった防腐剤を除去しました。側枝と思わしき部分にファイルを入れようとチャレンジしてみましたが、挿入ができなかったため、次亜塩素酸ナトリウムを満たした状態で、超音波による攪拌を複数回行い、メインの根管を徹底的に洗浄しました。

殺菌のために水酸化カルシウムを入れ消毒済みの仮蓋で歯を封鎖して、1回目は終了しました。

 

治療2回目

 

2回目には膿が出ていた症状も改善していました。再びラバーダム防湿を行い仮の蓋を外し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを根管内に満たして、超音波振動にて薬液を根管の隅々まで撹拌しながら洗浄を行いました。バイオセラミックシーラーとガッタパーチャポイントを用いて根管充填、コア用のレジンとファイバーポストによって土台を作製し、中に細菌が入っていかない状況にして治療を終えました。

 

術後のデンタルX線を撮影し、今後患者さんと共に病変の治癒を確認することをご説明し、治療を終了しました。

 

 

経過観察(1年)

 

術後1年の経過観察時、デンタルX線では病変は治癒しているように見えます。痛みが出たりすることもなく無事に過ごされていました。

病変の詳細を確認するためにCT撮影を行い術前術後を比較しました。

根尖病変が治癒し骨が再生しているのが確認できました。患者さんは「はじめは外科治療になるかもしれない・・・と、とても不安でしたが、病気が治っているのを聞いてほっとしました。とても嬉しいです!」と満足されていました。病変の原因になっているエリアを直接的清掃できたわけではないかも知れませんが、メインになっている根管を可能な限り綺麗にすることで、病変を治癒に導くことができました。今後も患者さんのご希望に添えるように、最善を尽くして参ります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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