- 再根管治療
右下奥歯が抜歯と言われたが、なんとか残したい。再根管治療で保存に成功した症例。
通院時の年齢 | 21歳 |
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性別 | 女性 |
通院回数 | 3回(初診+再根管治療2回) |
通院目的 | 右下の奥歯を抜歯と言われているが、なんとか残したい。 |
処置内容 | 再根管治療+支台築造 |
費用 | 176,000円+22,000円(※治療当時の費用になります。) |
備考 | 病変が大きく、下歯槽菅に近い。エンドぺリオや破折、穿孔が疑われる。 |
根管治療を日々行なっている中で、「この歯は残るだろうか?」「根管治療だけでは難しそうだな…」と思うような状況も多々あります。
「割れている可能性があるから抜きましょう」「病気が大きいので抜歯しましょう」と言われることもあるかと思いますが、病気が大きいから必ずしも治療ができないとは限りません。
今回は、下歯槽管を圧迫するほど大きな病変を再根管治療で保存した症例をご紹介したいと思います。
初診時
患者さんは右下一番奥の歯をここ数年間、痛みが出ては根管治療を繰り返していました。
噛むと痛みがあり、通院していた医院では「この歯はもたないと思いますので、抜いた方がいいかも知れません」と担当の歯科医師に言われていました。
しかし、諦めきれず治療法を探していたところ精密根管治療の存在をインターネットで知り、歯の保存が可能かどうかご相談に来られました。
右下7に噛むと痛い、疲れているとズキズキ痛むなどの症状があり、歯茎からの排膿もありました。
デンタルX線およびCT撮影を行うと下歯槽管に及ぶほどの大きな根尖病変が確認できました。
まずは再根管治療を行い、それでも治癒しなかった場合は、意図的再植術を行う旨を説明し、治療を開始することにしました。
治療1回目(根管治療)
まず麻酔を行い、古い材料を外し、虫歯を除去していきました。
その後ラバーダム防湿がしやすいように、コンポジットレジンにて隔壁を行いました。
一番奥の歯で器具の挿入が難しくはありましたが、ファイルが干渉なくスムーズに挿入できるように、超音波チップにてストレートラインアクセスを行い、ニッケルチタンファイルにて拡大形成を行いました。
次亜塩素酸ナトリウムを満たした状態で、超音波チップで攪拌し十分な洗浄をおこなったのちに、水酸化カルシウムを貼薬し仮の蓋をして、1回目の治療を終了しました。
治療2回目
前回治療終了後に少し痛みが出たものの、排膿も痛みもなくなっており、術前にあった打診が消失していました。
2回目も再びラバーダム防湿を行い仮の蓋を外し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを根管内に満たして、超音波振動にて薬液を根管の隅々まで撹拌しながら洗浄を行いました。
バイオセラミックシーラーとガッタパーチャポイントを用いて根管充填、コア用のレジンとファイバーポストによって土台を作製し、中に細菌が入っていかない状況にして治療を終えました。
術後のデンタルX線を撮影し、今後患者さんと共に病変の治癒を確認することをご説明し、治療を終了しました。
経過観察(4年8ヶ月)
その後、術後3ヶ月の時点で臨床症状もなくサイナストラクトも消失していたため、最終補綴をしてていただき経過を追っておりました。
術後8ヶ月の経過観察時にデンタルX線画像上での病変はかなり縮小しておりました。
そこから、新型コロナウイルス感染症の蔓延や、ご本人の妊娠出産等があり、しばらく経過が追えておりませんでしたが、久しぶりにご来院された際にデンタルX線およびCT撮影をさせていただきました。
CTでは、術前にあった根尖病変や垂直性骨欠損が治癒していることが確認できました。
「何件も歯医者まわりましたが、どこに行っても抜歯と言われました。先生に治療をお願いして本当によかったです!これからもちゃんと歯を大事にします!」とお言葉をいただきました。
すべての治療がこのようにうまくいくわけではありませんが、患者さんに喜んでいただけることはとても嬉しく思います。
引き続き、大切な歯を少しでも残せるように、日々精進してまいります。
※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。