CASE

症例紹介

  • 再根管治療

セラミックを被せた左下の奥歯が咬むと痛い。抜歯せずに残したい。

通院時の年齢 43歳
性別 女性
通院回数 3回 (初診+再根管治療2回)
通院目的 セラミックを被せた左下の奥歯が痛い。抜歯せずに残したい。
処置内容 再根管治療+支台築造
費用 176,000円+22,000円
備考 下歯槽管に近いところまで病変が出来ていた。エンドぺリオ病変疑い。

一番奥の歯(第二大臼歯)の根管治療は、常に歯科医師がしたくない治療の上位にランクインします。
・口がどれくらい開くかによって、治療難易度が大きく変わる。
・ラバーダム無しでは、治療時に唾液が歯の中に入ってしまう。
・治療器具やミラーが入りづらく、さらに繊細な器具操作が求められることがある。
・根管の形態が特殊である可能性が他の歯に比べて高い。
・複雑な根管形態である場合、根管治療のみでの治癒が難しい場合がある。
以上のようなケースに該当し、一般歯科において再根管治療が必要な場合、「この歯の治療が難しいため、抜歯しましょう。」となることもしばしばあります。
当院での再根管治療を希望されてご連絡をくださる方の中にも、「一番奥の歯の治療が難しく抜歯と言われたのですが、本当に抜歯になるかどうか一度見ていただきたいです。」といったご相談はよくあります。
今回は、下顎第二大臼歯の再根管治療により抜歯を回避した症例をご紹介したいと思います。

初診時

患者さんは、2年前に右下一番奥歯の虫歯が大きかったため、神経の治療を受けました。
治療後にセラミッククラウンを被せてもらい、問題なく経過していましたが、最近咬むと痛いという症状が出てきたため、担当の歯科医師に相談しました。
打診や動揺・サイナストラクトからの排膿があり、デンタルX線撮影を行うと根尖病変があったため、担当歯科医師が治療を開始しました。
何回か根管治療を行いましたが排膿が治らなかったため、担当歯科医師から「精密な根管治療があるのですが、一度お話聞いてみますか?」とご紹介されました。
CT撮影を行うと、Cシェイプと呼ばれる特殊な根管形態をしており、下歯槽管に近接する根尖病変が頬側の骨を溶かして口腔内と繋がっている状態でした。
破折やエンドぺリオの可能性があり、複雑な根管形態の歯であることも踏まえ、治療計画を説明しましたが、「出来るだけ自分の歯で咬みたいので、治療お願いします。」とのご希望があったため、治療を開始しました。

 

治療1回目(根管治療)

まず麻酔を行い、古い材料を外し、虫歯を除去していきました。
その後ラバーダム防湿がしやすいように、コンポジットレジンにて隔壁を行いました。

一番奥の歯で器具の挿入が難しくはありましたが、ファイルが干渉なくスムーズに挿入できるように、超音波チップにてストレートラインアクセスやイスムスの感染除去を行い、ニッケルチタンファイルにて拡大形成を行いました。
根尖孔部の感染が強くかなりの排膿がありましたが、超音波チップによる形成に加え、次亜塩素酸ナトリウムを満たした状態で超音波チップで攪拌し十分な洗浄をおこなうと、排膿も落ち着きました。
水酸化カルシウムを貼薬し仮の蓋をして、1回目の治療を終了しました。

 

 

治療2回目

前回治療終了後に、排膿や痛みがなくなっており、サイナストラクトも消失していました。
再びラバーダム防湿を行い仮の蓋を外し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAを根管内に満たして、超音波振動にて薬液を根管の隅々まで撹拌しながら洗浄を行いました。
根尖部が大きく拡大している状態であることを考慮して、MTAセメントを用いて根管充填、コア用のレジンとファイバーポストによって土台を作製し、中に細菌が入っていかない状況にして治療を終えました。

 

術後のデンタルX線を撮影し、患者さんと共に病変の治癒を確認することをご説明し、治療を終了しました。

 

 

経過観察(2年10ヶ月)

その後、術後3ヶ月の時点で臨床症状がなかったため、最終補綴をしてていただき経過を追っておりました。
術後2年10ヶ月の経過観察時に、デンタルX線およびCT撮影を行ったところ、術前にあった病変の治癒が確認できました。

 

CTでは、術前にあった根尖病変や垂直性骨欠損が治癒していることが確認できました。

「膿が止まらないとなった段階で抜歯かなと思いましたが、歯が残ってよかったです!治療していただきありがとうございます。」とお言葉をいただきました。
なかなか膿が止まらないようなケースでしたが、なんとか保存することができ、患者さんに喜んでいただけてとても嬉しく思います。
引き続き、大切な歯を少しでも残せるように、日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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