CASE

症例紹介

  • 再根管治療
  • 意図的再植術

セラミッククラウンの入っている右下の奥歯が咬むと痛い時があり、ニキビのようなものができている。再根管治療したがサイナストラクト(フィステル)が消えないため、意図的再植術を行なった症例。

通院時の年齢 48歳
性別 女性
通院回数 6回(初診+再根管治療2回+経過観察+意図的再植術+固定確認)
通院目的 右下のセラミッククラウンが入っている歯が咬むと痛む時がある。ニキビができている。
処置内容 再根管治療+支台築造+意図的再植術(半額)
費用 176,000円+22,000円+93,500円
備考 歯根端切除術を行うのが難しかったため、意図的再植術にて対応した。

サイナストラクト(フィステル)がある歯の再根管治療は、通常の再根管治療では治癒せず、外科治療(歯根端切除術・意図的再植術など)が必要になるケースがあります。
口の中と骨の中との交通路であるサイナストラクト(フィステル)があることによって、根の先に歯石などがついていたり、歯根が吸収されることで歯の形が変わってしまっていたりすることもあります。
今回は、下顎第一大臼歯の再根管治療を行なったが、サイナストラクト(フィステル)の改善が見られなかったため、意図的再植術を行なった症例をご紹介いたします。

初診時

患者さんは右下の奥歯の歯肉にニキビのようなものができ、普段はなんともないがたまに咬むと痛みが出たりする時があることを主訴に来院されました。
口腔内診査では、打診があり、ポケットは正常であるものの、頬側分岐部付近の歯肉にサイナストラクト(フィステル)が確認できました。
デンタルX線とCT撮影をしてみると、近心根に大きな根尖病変および根形態の異常が確認でき、遠心根にも小さいですが病変と思わしき像が確認できました。

治療方針としては以下をご提案しました。
①抜歯
②経過観察
③再根管治療→歯根端切除術または意図的再植術
治療方針の③をご希望されましたので、まずは再根管治療より進めていくことになりました。

数年前に被せ物をセラミックの自費の白いものに変更したとの経緯がありましたので、再根管治療の際は被せ物を外さない治療をご希望されました。
治療中に強く痛みが出る可能性や、歯の中の状態が悪く被せ物を外した方が良い場合は、残念ながら外す旨をお伝えしました。
再根管治療にてサイナストラクトが改善しない場合は、意図的再植術へ移行する可能性があること、その際に歯が割れてしまい抜歯になる可能性があること、術後に歯茎が下がってしまう可能性があることについてご説明しご理解いただきました。

患者さんは「治療自体はとても怖いですが、歯を保存できる方法でよろしくお願いします。」とおっしゃられ、次回より治療を進めることになりました。

 

 

治療1回目(再根管治療)

まず麻酔し、ラバーダム防湿を行い、セラミックを破壊しないように表面に穴を開けて、土台であるプラスチック材料を除去しました。
マイクロスコープで精査をしましたが表面には破折がなかったため、再根管治療を続行しました。
超音波チップとニッケルチタンファイルを用いて古いガッタパーチャポイントや感染部分の除去をしていきました。
根管内を次亜塩素酸ナトリウムで洗浄し、水酸化カルシウムを貼薬し1回目の治療を終了しました。

 

治療2回目(根管充填)

2回目来院時には打診はなく、頬側のサイナストラクトは縮小していました。次亜塩素酸ナトリウムとEDTAで最終洗浄をした上で、MB・ML・D根管にガッタパーチャポイントとバイオセラミックシーラーを用いて根管充填を行いました。
さらに、遠心根にファイバーポストを入れてレンジンコア築造を行い、術後のデンタルX線撮影をしました。
術後3ヶ月での経過観察のご予約をお取りし、この日は終了いたしました。

 

経過観察(術後1ヶ月)

患者様より「ニキビがまた出てきた。」とのご連絡をいただいたため、ご来院いただきました。
改めて根の先の状態や外科処置についてのご説明を行いました。
相談の結果、意図的再植術を行うことになり、次回治療を進めていくことになりました。
治療の際に、被せ物を外す必要がある旨を改めてご説明し、ご予約をおとりしました。

 

治療3回目(意図的再植術)

まずは麻酔を効かせた上で、鉗子とヘーベルを用いて歯をゆっくりと脱臼させていきました。
歯の根が2本あり、それらが開いた状態で骨に埋まっているため、抜歯時の破折リスクが高い状態だったため、破折を起こさないように、少しずつ力をかけて、ゆっくりと抜いていきました。
無事に歯を割らずに抜歯した後は、肉芽組織を取り除き、根の周りに破折などのトラブルがないかどうかを確認し、根尖を切断して逆側から感染部分を染め出しました。
青く染まった感染部分を除去し、MTAセメントで逆根管充填を行い、歯を抜いた場所に戻し、固定を行いました。
デンタルX線写真で歯の状態を確認し、問題ないと判断して、その日の治療は終了しました。

 

経過観察(意図的再植術後1年)

術後1ヶ月の時点で、サイナストラクトは消失しており、歯の揺れはありませんでしたが、打診がまだありました。
6ヶ月の時点で仮歯が装着されていましたが、打診がまだ少し残っていたので、再外科の可能性も視野にいれ、術後1年までは仮歯で経過をみることになりました。
術後1年での経過観察では臨床症状もなく、デンタルX線・CT画像上でも問題ないと判断し、被せ物の装着へと移行していただきました。

 

 

 

 

患者さんからは「治療は怖かったですが、抜歯にならずに残せてとても嬉しいです。ありがとうございます。」とのお言葉をいただきました。
第一大臼歯は歯の形態が複雑であることも多く、意図的再植術の適応にならないこともありますが、今回は無事に手術を行うことができました。

打診痛がなかなか治らず、再外科や抜歯が必要になる可能性もありましたが、無事に患者さんの歯を保存することができ、とても嬉しく思います。
引き続き、抜歯したくない・なんとか歯を残したいと願う患者さんのために日々精進してまいります。

※これらすべてのX線写真やCT画像は、歯の保存治療普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。

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