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「フィステル(サイナストラクト)があるから抜歯です。」は本当?

  • 院長ブログ

当院を訪れる患者さんの多くは、抜歯と言われている歯をなんとか保存したいという希望を持って来院されます。
その中でも「フィステルがあるから抜歯と言われましたが、もう残せないのでしょうか?」というものがあります。
患者さんご自身で調べてみても、フィステルと言われていたり、サイナストラクトと言われていたり、よくわからないというご意見もお聞きします。
今回は、フィステル(サイナストラクト)について書きたいと思います。

 

*フィステルとサイナストラクトって何が違うの?
まずはフィステルとサイナストラクト定義についてですが、日本においてはほぼ同義で用いられることが多いですが、厳密には違うものとされています。


AAE(アメリカ歯内療法学会)のGlossary of Endodontic Terms(歯内療法用語集)では下記のように記載されております。

sinus tract — A pathway from an enclosed area of infection to an epithelial surface; opening or stoma may be intraoral or extraoral and represents an orifice through which pressure is discharged; usually disappears spontaneously with elimination of the causative factor by endodontic treatment. The term fistula is often inappropriately used.
サイナストラクト— 密閉された感染領域から上皮表面までの経路;開口部またはストーマは口腔内または口腔外にあり、圧力が排出される開口部を表します。通常、歯内療法によって原因因子が除去されると自然に消失します。
フィステル(瘻孔)という用語は、しばしば不適切に使用されます。

 

fistula — An abnormal communication pathway between two internal organs or from one epithelial lined surface to another epithelial lined surface; not a sinus tract.
フィステル — 2 つの内臓の間、または 1 つの上皮で覆われた表面から別の上皮で覆われた表面への異常な連絡経路をことを示す;サイナストラクトではありません。

従って、私たちがフィステルと日頃言っているプクッとしたニキビのようなのは、正確にはサイナストラクトということになります。
ただし、患者さんの中ではフィステルという言葉が浸透していることもあり、あえてサイナストラクトではなくフィステルで説明する先生もおられます。
 厳密には「フィステル」と「サイナストラクト」は違うものであるということは知っておいても良いかと思います。

 

 

*フィステル(サイナストラクト)があると抜歯になるの?
「フィステル(サイナストラクト)があるので根管治療では治らない。抜歯した方が良い。」と説明されることがありますが、必ずしもそうではありません。
 フィステル(サイナストラクト)があるからと言って、「重症である。」あるいは「治療に対して抵抗性が増している。」とみなしてはいけません。

実際の治療においては、まずは根管治療が優先されます。
フィステル(サイナストラクト)自体には特別な治療を必要としませんが、行われた治療がうまくいったかどうかをどうかを評価する有益な指標になります。
一般的には、根管充填はフィステル(サイナストラクト)が完全に治癒してから行うとされています。
もちろん、フィステル(サイナストラクト)があったとしても、一回で治療を終了させて良いと考える先生もいます。
実際文献上では、一回で治療を終了しても、複数回で終了しても成功率の違いはそれほどありません。
であるならば少ない回数で終える方が、期間が短く通院の負担が少ないため患者利益につながるとも言えます。
しかし、当院では回数を短くするよりも、より確実に根管内の細菌を減少させ、フィステル(サイナストラクト)が改善した後での根管充填が望ましいと考えております。
そして、できる限りの根管治療をしてもフィステル(サイナストラクト)が治らない場合は、歯根端切除術や意図的再植術などの外科治療へ移行いたします。

当院の症例でも、フィステル(サイナストラクト)と関わりのあるケースがあります。
一部下記にリンクを貼っておりますので、ご参照いただければと思います。

 

・歯茎が腫れて押すと痛い。ニキビから膿が出てくる。側枝が病変を作っている?再根管治療を行なった症例。

 

・セラミッククラウンを入れた歯が咬むと痛い。フィステルがあるから抜歯した方が良いと言われたが、抜きたくない。再根管治療と歯根端切除術で治癒した症例。

 

・歯茎にニキビができて膿が出てくる。再根管治療だけでは治癒が難しいと判断し、意図的再植術を追加で行なった症例。

 

フィステル(サイナストラクト)のある歯も、保存できる可能性はあります。
「抜歯と言われた。」「抜いてインプラントをした方が良い。」と言われた歯であっても、治療法次第でまだまだ使うことができるようになるかも知れません。

お困りの方、まずはご相談ください。
それぞれの悩みに合った治療方法をご提案いたします。

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